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ビズテク塾 【成果主義の誤解を解く】 (2) プロセス評価が重要

日経産業新聞2004年11月25日 26面
執筆者:桑畑 英紀

 うまく運用されている成果主義の事例では、プロセスや行動を評価するための様々な工夫がなされている。結果だけでなく、そこに至るプロセスを振り返り、 良し悪しを見極めるところにこそ、社員や組織が学習するチャンスがあるからだ。改善すべきは改善し、継続すべきベストプラクティスは広く社内に共有するこ とが重要だ。

  プロセス評価の例には「成果を出すプロセスにおける行動の価値基準」の策定や、上司だけでなく、同僚や部下、取引先からの 評価である「360度フィードバック」の採用などがある。行動の価値基準は企業文化のレベルから、社員や組織の行動に働きかける指針として活用される。価 値基準が日々の職務プロセスのなかでどう実践されているか、その体現度を360度フィードバックなどの活用によって的確にモニタリングし、本人にフィード バックする会社が増えている。

業績最優先にあらず

 行動規範と業績との優先順位が明示されているケースもある。好例はゼネラル・エレクトリック(GE)の前会長であるジャック・ウェルチが示した指針であ ろう。ウェルチはチームワークや変革へのコミットメントなどGEの社員に求める行動規範を定め、その実践を強く求めた。さらに、高い業績をあげつつも行動 規範の体現度が低い場合と、行動規範の体現度は高いが業績が思わしくない場合では、明確に後者を高く評価した。前者の場合、短期的な貢献で終わることも多 いのに対し、後者の場合は、たまたま業績が優れなかったとしても、会社の価値基準や文化を理解、共有し、実践している以上、間接的あるいは中長期的に会社 の業績を向上させる可能性が高いと考えたのだ。短期的な業績にとらわれず、正しいプロセスで挑戦すべしという明快なメッセージを出したのである。

  1980年代から90年代にかけての米国では、企業の競争力低下への危機感から、米国型マネジメントシステムが見直された。特に個人主義の中で組織の力を どう最大化するかが焦点となった。単なる個人ベースの成果主義ではなく協働への貢献、つまり組織のミッションやビジョン実現に向けた価値観や戦略に基づい て、「組織のためにどういう行動を取り、どれだけ貢献したか」を評価の柱としようした。

一体感出す目標管理

 この動きの典型を、ルイス・ガースナー会長が率いた IBMに見ることができる。彼は「総合力こそがIBMの力の源」との信念に基づき、社内の一体感の醸成を会社復活の鍵として重視した。同社の目標管理制度 は、社員に対し「チームのために何をするか、したか」を問うシステム。一方で、プロフィット・シェアリングやストック・オプションなどのしっかりとした利 益還元のシステムを整備し、チームをはじめとする会社総合力の成果としての業績は必ず個人に還元するという会社の姿勢を徹底した。結果として組織の総合力 が強化され、業績は急速に回復し、IBMは復活した。

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