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ビズテク塾 【成果主義の誤解を解く】 (4) 客観性は納得性の一要素

日経産業新聞2004年12月1日 30面
執筆者:桑畑 英紀

 成果主義を実現するための代表的な方策として目標管理があることはすでに述べた。ただし、目標管理の提唱者ピーター・ドラッカーがいうように、「自己統 制による目標管理」でなくてはならない。部下自身は「自己マネジメントを基本とした目標による管理」を、そして管理職は「部下の自己マネジメントに対する マネジメント」を実施するという考え方だ。そこに期待されるメリットは社員一人ひとりが自律的に付加価値を創出する「自律型・創発型組織」の実現にある。

現場主義徹底の方策

 そもそも成果主義における目標管理は、一人ひとりの社員の自律と自己統制を起点とするものだ。トップダウンで設定され、現場のニーズを反映しないシステ ムではなく、むしろ現場主義を徹底するための方策である。トップは経営のビジョンを描き提示したうえで、組織における各職務の役割・成果責任をトップダウ ンで展開する。そして各職務の役割・成果責任を受けて設定される具体的な目標は、それぞれの階層の管理職が、組織目標への統合に向けて自己統制により決め ていく。部下自身は自己マネジメントを基本とした目標による管理を、そして中間管理職はミッションによるマネジメントを行うことにより、自律的な組織運営 が実現される。
  本来の目標管理は、単なる業績評価の手法ではなく、組織マネジメントの考え方である。目標設定→達成行動支援→評価決定・フィー ドバックというマネジメントプロセスを、あくまでも上司と部下の双方向のコミュニケーションによって実施すことを前提としている。いかに「納得感」を確保 するかが目標管理の成否を分けるポイント。客観的評価を目的として詳細な評価基準や評価シートを設定して運用しているケースも多いが、ほとんどの場合機能 していない。客観性は納得性を高めるためのひとつの要素に過ぎない。

双方向でマネジメント

 評価者が評価の完全性や客観性の追及に捕らわれているうちは、「この制度で正しく評価できるのか」といった懸念から、評価制度否定に終始しがちである。 我々が評価者研修をする際には、「目指すべきは納得性で、納得性は上司と部下の双方向のマネジメントプロセスいかんで十分実現可能である」と指摘する。そ こに気付くと、評価者は評価のプロセスやツールの習得と改善を主体的に考えるようになる。
  成果主義は、評価者の主観を排除した洗練された客観評 価の仕組みではない。管理職は日常的に部下の仕事ぶりを把握したうえで主体的に判断することが必要となる。年次という属人的な要素を基準とする年功制に比 べ管理職の負荷は大きくなる。目標設定、達成度の見極め、フィードバックまで双方向のマネジメントプロセスを実施するのだから当然だ。精巧な評価基準で 「誰がやっても同じ」評価運用を目指すのではなく、部下の納得性を高める評価プロセスを実現できるかどうか、管理職の力量が明確に表れる。

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